紅魔闘伝「外伝」

○セシリアの部屋

セシリアM「もう、火影ったら、私と紅のことを見て、もしかして夫婦やろか? だなんて……まったく、なんて勘違いをするのかしら? (嬉しそうに)……でも、外からみれば、そんな風に見えたりするものなのね? ここのところ、紅とは、ずっと二人だけで旅してるし、それなりに仲良くはやってきたとは思うけど、私のこと、どう思ってるんだろう?」
紅R(ゴリラ姫)
セシリアM「うぅ……そもそも女の子として見て貰えてないのかも……。大体、私のことが気になるなら、普段から色々とありそうなものよね? 例えば、こんな風に一人寂しく考えごとをしてる夜なんかに、部屋に遊びに来てくれたりとか……」

 効果音(ノックの音)

セシリアM「そうそう、こんな風に……って、嘘! 本当に来ちゃったの? ……ど、どうしよう? とにかく、返事はしなくちゃよね?」
セシリア「(扉に向かって)ちょ、ちょっと、待ってて」
セシリアM「お、落ち着くのよ、セシリア。こういう時、どうすればいいのか、考えるの。……ダメ、何も思いつかないわ! こんなことなら、マリーに色々と聞いておけばよかった……。あの子、そういう話ばかり好きで、誰彼構わず聞き回ってるのよね。お陰で私なんかよりずっと耳年魔になっちゃって。って、そんなこと考えてる場合じゃないわ! とにかく、散らかってる装備品の数々だけでも片付けなくちゃ!」

 効果音(金属音)

 効果音(ノックの音)
セシリア「はーい、今、開けるわ?」

 効果音(扉の開く音)

火影「遊びにきたで」
セシリア「って、火影?」
火影「なんや、その反応? 傷つくな」
セシリア「ごめんなさい、そんなつもりじゃないのよ? 火影が遊びに来てくれて、嬉しいわ」
火影「ほんまか? ほんまは、うち以外の誰かさんに来て貰いたかったんちゃうか?」
セシリア「そ、そんな訳ないじゃない! 私は別に、紅に来て欲しかっただなんて、少しも思ってないから!」
火影「うちは紅なんて一言も言うてへんのやけどな」
セシリア「え、そうだっけ? あはは……た、立ち話もなんだし中に入ってよ」
火影「あがらせて貰うで」

 効果音(扉を閉める音)

セシリア「って、火影?! あなた、なんて格好なの?!」
火影「格好? 別に普通やろ?」
セシリア「それが普通ですって!? ほとんど下着姿じゃない?」
火影「下着? ああ、水着のことか」
セシリア「水着、って何?」
火影「知らんのか? 龍麗国では常識なんやけどな」
セシリア「知らないわ」
火影「大陸最南部にある龍麗国は、一年中温暖な気候でな。夏場ともなると、むっちゃ暑いねん。それこそ、トカゲが火吹く暑さや。そやから、夏場はみんなこの水着を着て水場に出かけるんや」
セシリア「そんな下着みたいな格好で? 破廉恥だわ……」
火影「下着やなくて、水着いうてるやろ?」
セシリア「でも、見た目は完全に下着よ? 恥ずかしくないの?」
火影「(決め台詞っぽく)下着やないから平気やもん!」
セシリア「……なんだか、心配だわ」
火影「なんで、うちからそっと目反らすねん?!」
セシリア「だって、その格好で、私の部屋まで来たのよね?」
火影「当然や。セシリアの部屋の前まで来てから、わざわざこの格好に着替えたいうんか? うち、何がしたいねん」
セシリア「そうだけど。途中で誰にも会わなかったのよね?」
火影「二階はうちらしか泊まっとらんしな」
セシリア「火影はまだ若いんだし、顔も可愛いんだから、気をつけなくちゃだめよ?」
火影「セシリアに、ガチに心配されてもうた……。水着の話はええねん。それより、うちに付き合わへん?」
セシリア「付き合う? どこかに行くつもりなの?」
火影「海にいくんや」
セシリア「そんな所へ、何しに行くの?」
火影「水浴びに決まってるやろ!」
セシリア「水浴び? でも、フラーの港町の海って、人が集まってくるんじゃないの? そんなところで水浴びなんてできないわ」
火影「せやから、水着を着ていくんやないか」
セシリア「え?」
火影「セシリアの水着も持ってきたで」

 効果音(水着を広げる音)

セシリア「随分、薄い布地のコルセットね……」
火影「いやいや……これが水着なんやって」
セシリア「(ハッとしたように)まさか、これを私に着せようだなんて考えてないわよね?」
火影「その、まさかや」
セシリア「無理よ! こんな下着みたいな格好で出歩くなんて!」
火影「……一旦、下着のことは忘れよか。……話がエンドレスや」

○海へ

セシリア「うぅ……結局、水着を着せられてしまったわ……」
火影「夜遅くで、誰にも会わへんかったから、ええやないか」
セシリア「そうだけど、もうお嫁に行けない気分だわ……」
火影「そん時はうちがお嫁に貰ったるで」
セシリア「火影は女の子じゃない」
火影「知らんのか? 龍麗国には女同士でも結婚できるちゅう法律があるんや」
セシリア「そうなの?」
火影「嘘や」
セシリア「火影ったら」
火影「なに、婿の一人や二人、うちが面倒みたる。(少しからかうように)もっとも、セシリアには既にええ婿候補がおるようやけどな」
セシリア「どういう意味よ?」
火影「(声マネをして)私は別に、紅に来て欲しかっただなんて、少しも思ってないから!」
セシリア「火影!」
火影「(笑ってから)セシリアがお嫁に行けないなんて、あり得えんちゅうことや」
セシリア「(すねたように)変な自信ね」
火影「自信おおありやで。今のセシリアを見て、恋に落ちん男子はおらへん。なんなら女子もや」
セシリア「こんな姿を見られたら、生きていられないわ」
火影「そいつは弱ったな。でも、鳥かごの中の鳥やないんや、大空に自由に飛び立ってもええんやないか?」
セシリア「え?」
火影「折角、来たんや! 海に入ってみいへん? どっちが先に海に入れるか競争や!」
セシリア「ちょっと! 待ってよ!」

○海に入る
 効果音(波しぶきの音)

セシリア「うふふふ」
火影「ほれほれ」
セシリア「もう、やめてよ、火影~」
火影「どや、楽しいやろ?」
セシリア「そ、そうね」
火影「なんや、まだ恥ずかしいんか?」
セシリア「少しだけ。でも、楽しいわ。とても。海で水浴びすることが、こんなにも楽しいことだなんて、知らなかったわ」
火影「そう言うて貰えると、うちも連れて来た甲斐があったちゅうもんや」
セシリア「そうね。ありがとう、火影」
火影「少し疲れたやろ? あそこの海の家で少し休まへん?」
セシリア「いいわ」

○海の家へ
 効果音(酒瓶を置く音)

火影「一杯やるか!」
セシリア「……これって?」
火影「酒にきまっとるやろ! セシリアも付き合わへん? うち、酒は一人で飲まん主義やねん」
セシリア「無理よ! だって、私、まだ16よ!」
火影「それなら大丈夫や。フラーでは16から酒が飲めるそうや」
セシリア「そうなんだ? でも、やめておくわ。お酒は20歳になってからって、決めてるから」
火影「しゃあないな。けど時雨は下戸やしな。晩酌に付きおうてくれる人、探しとったんやけど、セシリアは飲まれへん言うし、どこかに適当な人物はおらへんかったかな? どっかに、いたような。ああ、おったおった。セシリアの連れに、丁度都合のいい奴がおったな。ちゅうことで、ここら辺で解散っちゅうことで」

 効果音(酒瓶を持つ音)

セシリア「ちょっと待って。どこへ行くつもりなの?」
火影「なんやねん、急に怖い顔して……」
セシリア「え? そんな顔してた? そうじゃなくて、まさか、紅のところにいくつもりじゃないでしょうね?」
火影「ぴんぽん、正解や」
セシリアM「こんな下着みたいな恰好をした火影が、紅のところに行くですって? 一体二人で何をするつもりなの!? って、私ったら、何考えてるのかしら。でも、そんなの、嫌!」
セシリア「あ、あんなところに、ジャイアントスパイダーが」
火影「ひぇ堪忍して!! うち、蜘蛛だけは苦手なんや!! ……って、おらへんやん」
セシリア「はっ!」

 ※セシリアが酒瓶にチョップする。
 効果音(瓶が割れる音)

火影「なぁああ!! 酒瓶が真っ二つに!!!!! 酒の一滴は、血の一滴やで!! 勿体ない!! 勿体ない!!」
セシリア「た、大変ね。これじゃあ、紅のところにいけないわね……」
火影「一体、何が起こったんや?」
セシリア「さ、さあ、かまいたちの仕業じゃない?」
火影「そっか、かまいたちか。なんてな。セシリアやろ? 酒瓶割ったの?」
セシリア「それは……はい、私です」
火影「なんで、こないなことしたんや? なんて、聞くだけ野暮か。紅やろ?」
セシリア「え?」
火影「うちと紅が二人っきりで会うところを想像して、嫉妬したんやろ? セシリアは可愛ええなぁ」
セシリア「ち、違うわ! 私は別に紅のことなんか」
火影「ええんやで、もっと素直になっても」
セシリア「だから、違うって――」
火影「それで、ええんや」
セシリア「え?」
火影「奥ゆかしいセシリアもかわえぇけど、もっと積極的になってもええとうちは思うんやけどな」
セシリア「火影……」
火影「そうそう。聞いた話やけど、フラーの市場でサマーフェスティバルちゅうもんが開催されるんやて。ぎょうさん人が出ておって、いろんなもんが売ってるそうや。『エルガイスト』いうたっけ? 捜しておるんやろ? もしかしたら、そいつも売りに出されてるかもしれへんな」
セシリア「エルガイストが!?」
火影「せやから、紅を誘ってみたらええんやないかな」
セシリア「そうね。うん、そうするわ。ありがとう、火影!」
火影「さて、もう一泳ぎしよっか?」
セシリア「そうね」